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消化器外科の看護師は残業が多くて当然!?サービス残業もしなきゃいけないの?
「消化器外科って残業が多い」とか、「消化器外科は残業して当たり前」とか、「サービス残業もある」とか、そんな話は聞いたことはありませんか?
「消化器外科って忙しい」「仕事がハード」といったイメージも強いようです。消化器外科で働いていると、他の部署の人達や患者さん達から「大変ね」なんてなぜか声をかけられることもあるくらいです。
病院によって差はあるだろうとはいえ、本当に残業は多いのが当たり前なのでしょうか?また、残業が多くなってしまったり、サービス残業になってしまったりするのは、どうしてでしょうか?
実際に消化器外科では残業はどんなふうにして起こるのか、残業が多いなぁ、と思った時にどんな手が打てるか、一緒に考えてみましょう。
目次 [目次を隠す]
消化器外科看護師は残業が多いのが当たり前なのか?
ある消化器外科病棟の様子を見てみましょう。
とある消化器外科病棟のナースステーションにて、午後4時45分・・・
マル子さん(24歳)は新卒の時から消化器外科で働き始めて、今年で4年目の春。丸3年働いて、消化器外科のことは一通りわかるようになり、今年はプリセプターとして1年目のお姉さん役を期待されています。
病棟の委員会でも、今年からクリニカルパス委員のサブリーダーになり、まさに、病棟の働き頭・・・。「いよいよ私も頼りにされる時代がやってきたわ、お仕事頑張ろう!」とやる気もいっぱいです。
その一方、色んな経験を持ったスタミナたっぷりの先輩達の中で、先輩との関係を保つには気合いで乗り切って丸く収めたほうが良いことも、この3年で学んできました。
日勤の午後4時45分、マル子は夜勤への申し送りも終わり、ほっと一息・・・。
(今日は6時からパス委員会の会議だから、それまでに気合いで記録を済ませたら、それで終われそう。30分くらいなら残業つけなくていいよね。)と思っていました。
その時、マル子のすぐ後ろで内線電話が鳴りました。
マル子「ハイ、7階南病棟、マル山です。」
手術室看護師「肝臓切除術の肝田様、手術終わりましたのでお迎えをお願いします。」
マル子「ハイ、肝田様ですね、わかりました」
マル子心の声(えーと、肝田様の今日の担当は誰かな・・・それにしても、いつも夜勤ギリギリの時間にお迎えって、何とかならないの?)
肝田様の担当は看護師12年目・消化器外科5年目・救急経験者で、医師も口では太刀打ちできないという口村口子先輩でした。
マル子(口村先輩の患者さんかぁ・・・うわ、申し送り途中なの?声かけにくいなぁ・・・)
マル子「申し送り中すみません、口村さん、担当の肝田様、肝切の手術お迎えです。」
口子「あっ、ごめん、今は申し送り中だから行けない。」
口子「誰かオペお迎え行けないー?(大声で周りに声をかける)」
夜勤前でステーション内はごった返しており耳を傾ける者はおらず、夜勤の夜子も申し送り中なこともあってか知らん顔しています。
マル子(これはやばいな、丸く収めなくては・・・)「口村さん、私、行ってきますね。」
口子「助かるー、さすがマル子、ありがと。誰か一緒に行く人いる?」
マル子「いいえ・・・誰か探します。」
口子「今日私が指導していた一年目の一子、あんたの担当プリセプティーでしょう?」
マル子「はい・・・」
口子「たぶんもう少ししたらステーションに戻ってくると思うから、行くように声かけとくわ。」
なんだかんだの末、マル子が手術室に行くともう5時前、手術室からの申し送りの途中で5時の日勤終業のチャイムが鳴りました。
マル子(戻ってすぐに口子先輩に肝田様を渡せば、まだ委員会までに気合いで記録できる、できる・・・がんばろう、うんうん。)
一子「先輩、マル山せんぱぁい、あのぅ、ちょっといいですかぁ」
マル子「ああ、ごめん、考え事してたの、何?」
一子「口村さんに、肝田様の術直後の観察してって言われたんですけど・・・口村さん怖くて、指導をお願いできなくて・・・先輩、指導してください」
マル子(ええ?もう5時過ぎてるのに?私に言うかぁ・・・)と思いつつ、「いいよ・・・」
マル子は術直後の観察やケアに不慣れな一子を見守り、口子と夜子に申し送りを済ませて肝田様の記録も済ませると、もう5時半を過ぎていました。
口子「マル子、ありがとねー、おかげで私はこの間に記録を終われたし、助かったわ、お先に!」
マル子(自分だけ仕事終わったの?ずるい!)「お疲れ様です・・・」
夜子「ちょっと、口村さん、肝田様のこの術後指示どうなってるの、一子に聞いてもあの子わかってないんだけど?」
口子「私、直接聞いてないから知らないよ、マル子に聞いてよ。」
マル子が術後指示を夜子に伝え終わると、6時まであと10分、委員会までもう時間がないよ!
一子「せんぱぁい、ありがとうございました、お先に失礼しまぁす」
マル子はその後委員会に出席し、委員会が終わって病棟に戻るともう7時を回っていました。
マル子(これから記録かぁ・・・あー、今日はもう少し早く帰れるはずだったのに・・・、会議を挟んだとはいえこんなにたくさんは残業時間もつけにくいなぁ。)
夜勤スタッフも出払ったステーションで一人記録をしていると、手術を終えた医師達がやってきました。
医師「お、マルちゃん、まだまだお仕事頑張ってるねー、あのさ、この患者さんのこと、わかる?」
「もう、勘弁して!私は日勤なんだから、夜勤の夜子さんに言ってよ!」
とは絶対に言えないマル子、ついつい医師に愛想笑い、まだまだ帰れそうにないのでした・・・。
いかがでしたか?
マル子さんの終わらない日勤・・・これは極端な一例ですが、消化器外科で残業が増えてしまう時の様子が、なんとなく想像できたでしょうか?
先輩に言われるとつい引き受けてしまう、後輩に言われるとますます断りにくい、どこの部署でもありがちなことですよね。
その上に、消化器外科ならではの雰囲気や業務時間の偏りもあって、これが残業の素になっているのかな、というところも少し味わってもらえたかもしれません。
では、実際のところはどうなのか、より具体的に考えてみましょう。
「ナースのかえる・プロジェクト」(日本看護協会)について考えてみました。
日本看護協会の「ナースのかえる・プロジェクト」、ご存知ですか?
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/jikan/pdf/kaeru.pdf
こちらで言われている長時間労働の実情について考えてみました。
交代制勤務者の23人に1人が過労死危険レベルの勤務
小見出しのような報告がありますが、23人に1人というと各病棟に1~2人くらいの人が過労死危険レベルの勤務状況ということです。これは平均した数字ですので、もちろん部署によって偏りはあることでしょう。
「過労死危険レベル」というのがどのくらいかと言うと、まず、「1か月の超過勤務60時間以上」ですが、週休2日制の部署で毎日平均3時間程度の残業です。これは、消化器外科ではかなり現実的な数字なのかもしれません。
超過勤務として計上している・いないに関わらず、毎日3時間程度残業している人は病棟に1人はいるかもしれないという感覚は、消化器外科ではありがちなのかもしれません。
消化器外科での日勤の業務は、手術前・手術直後・手術後の様々な時期の患者さんを抱えており、検査出しやリハビリや指導など業務内容も多岐に渡っています。
最近では記録が重視されていますが、術直後や重症などの急性期の患者さんはこまめで詳細な記録を必要とします。病院にもよりますが、日勤では残業を全くせずに、というのは、消化器外科では難しいかもしれません。
また、「3交代の勤務の間隔が6時間以下にならない」という条件で見ると、日勤→深夜の場合なら日勤の残業を1時間程度にしないとクリアできず、かなり難しいかもしれません。
さらに、「2交代の夜勤での仮眠をとることができるか」という条件で見ると、よほど患者さんの状態が安定しているか、経験がある看護師が夜勤者でないと難しいかもしれません。
消化器外科では、月曜日から金曜日までは手術があって、ほぼ毎日手術直後の患者さんを数名抱えていますので、夜間の観察もこまめにしなければなりません。
そんな夜勤の合間に十分な仮眠をとるには、仕事に慣れていて、患者さんの状態を見極める目が必要かもしれません。
20代が疲れている
統計では20代の看護師に長時間勤務が多く、疲労の訴えも強いとされています。消化器外科では、体育会系的な病棟の雰囲気もありがちで、中堅と言われる20代に仕事の負担がかかりやすいかもしれません。
また、患者さんの搬送や処置など力仕事や体を使う仕事も少なくないため、若い人にそういう仕事が回されやすく、疲労も溜まりやすいかもしれません。
30代くらいになると、色々な部署を経験して看護のポイントを掴むことで、適度に力を抜いたり仕事の要点を押さえて端折ったりすることができるかもしれません。
しかし20代では、新卒の時から消化器外科しか知らない看護師も多いので、どうしても力の抜き方がわからない人も少なくないのです。
「長時間労働」「疲労自覚症状」「医療事故の不安」に強い関連
長時間労働では疲労が増し、疲労があると投薬などで間違うのではないかと不安が強くなり、事故への不安があると過度に緊張して労働に時間がかかる、という悪循環です。
また、不安を持って仕事をしていると精神的緊張が増して疲労感を感じやすくなります。統計でこのような結果が出ていますが、これは消化器外科でも実際に少なからず見られることです。
消化器外科では術後の経過などによって、点滴や内服薬や食事など指示の変更がしばしばあります。病院により業務手順は異なりますが、医療事故の裁判などでもこういった指示の確認は最終的には実施する看護師の責任になることがほとんどです。
消化器外科では緊張する確認作業も少なくないと言え、これが長時間労働や疲労に少なからず関係しているとも言えます。
未払い残業の実態
いわゆるサービス残業のことです。おそらく、残業が長時間になる人はサービス残業も少なくないでしょう。サービス残業に消化器外科病棟特有の雰囲気が関係していることも考えられます。
消化器外科では、体育会系的な雰囲気もあって、「自分の仕事は自分で」とか「時間が遅くなるのは自分の手が遅いから」という考えを持つ人も少なくありません。
また、暗黙のルールで「短めにつけよう」とする向きもあります。プライドもあるので、「あまり長時間残業をつけると先輩に怒られる」とか「残業が多いということは自分の仕事が未熟だと思われるから嫌」などの考えもあるのです。
このように、長時間残業している一方で、正直に残業時間を付けることをためらう看護師も少なくないかもしれません。
中間管理職も疲れている
いわゆる主任・係長などのクラスは、管理職でありながら一般の看護業務も行っている病院が少なくありません。一スタッフとしてあてにされて看護業務を行いながら管理業務も行うのは、消化器外科でもなかなか容易なことではありません。
また、看護師長にもスタッフが仕事を終わるまで心配で帰れないという人もいます。日常の業務時間の中では管理業務は行いにくいために、持ち帰り業務が多いのも中間管理職の特徴と言えます。
病院によっては、中間管理職は役職扱いとして事実上は超過勤務をつけることが許されなかったり労働組合に入れないため、ほとんどサービス残業というところもあります。
看護管理者の悩み
もちろん多くの管理者は、自分も含めて病棟スタッフが長時間労働になることは、労働時間管理に問題があると考えていて、責任も感じています。
しかし、ただ「早く終わらせて」「早く帰って」と言っても、労働時間の短縮にはつながりません。むしろそうした声掛けは、超過勤務の申告を減らしてサービス残業を増やしてしまうことが多いのです。
多くの消化器外科病棟でも、「仕事についていけない」「しんどい」「雰囲気が合わない」「結婚・妊娠・出産」など様々な理由で欠員が出ることがあります。
なかなか中途採用の希望者が少ないこのご時世では、途中でできた欠員が埋まることはなかなか難しく、年度末までそのまま、ということもしばしばです。
また、消化器外科特有の雰囲気や慣習もなかなか簡単には変わりません。
長時間労働を改善するには業務改善が効果的ですが、業務量自体を減らすことは難しい面もあるので、根気強い取り組みが必要です。
様々な事情があるにせよ、煩雑な業務をきっちりこなしながら労働時間を短縮させるのは、一筋縄ではいかないので、看護師長のような管理者も悩んでいるのです。
消化器外科看護師はどうして、残業が多いのが当たり前なのでしょうか?
消化器外科は仕事が複雑?
消化器外科は手術前から手術を経て退院までの患者さんを常に抱えています。つまり、超急性期から回復期まで全く違う時期の患者さんを扱う部署で、それぞれの時期の患者さんに全く質の異なる看護を提供しなければなりません。
患者さんの状態の変化によって医師の指示も変更が多いため、看護師の確認作業も多くなります。
それぞれの患者さんが様々な時期を通るため、記録物や看護診断・看護計画・褥瘡計画・転倒防止計画などの見直し作業も多くなります。
超急性期の患者さんを抱えているので、急変やナースコールも多いかもしれませんし、それにより他の業務が中断されることもよくあることです。
術前のオリエンテーションをしたり、回復期の患者さんにリハビリや指導をしたり、手術のお迎えをして観察をしたりなど、それなりに時間がかかる仕事も多いのです。
多くの病院でクリニカルパスは用意されていますが、記録や観察や処置が難しい複雑な手術にこそパスは適用されないので、より業務に時間がかかりやすいです。
また、消化器外科では縫合不全などの合併症も多いので、クリニカルパスの脱落も少なからずあり、業務や記録が煩雑になることがあります。
夜勤では、手術直後の患者さんを抱えていることがほとんどで、観察やケアもこまめに行わなければならないことが多いです。
また、最近では高齢者の手術が多いのですが、手術を受けて食事をとれなくなると術後せん妄や不穏状態になる高齢者の方も多く、目が離せないこともあります。
消化器外科ではこのように業務量が多く複雑になりやすいという業務上の要因があるため、長時間労働につながりやすいと考えられます。
消化器外科は体育会系?
消化器外科の看護師さんは「怖い」「ちゃきちゃきしてる」「バリバリ働く」などのイメージを持たれがちですが、確かにそういう一面はあるのかもしれません。
すると、「残業するのは当たり前」「残業してでも自分の仕事は終わらせるのが当然」「残業に弱音を吐かない」という体育会的な雰囲気が育まれやすいのです。
各勤務の仕事が煩雑なので、「仕事を残して次に迷惑をかけてはいけない」というの意識も強いかもしれません。
また、消化器外科の看護には専門的な知識が必要なので、なんとなく他部署よりスタッフの上下関係やそれぞれの経験や能力を重視する傾向は強いようです。
上記のように業務が複雑になりやすい中でも、経験が豊かで消化器外科の特性を心得ているような看護師ならうまく業務をこなすことができます。
そんな風に仕事をこなしている姿からも、経験や能力があるスタッフは一目置かれやすいとも言えます。このため、若いスタッフは先輩に仕事を残さず、自分でやって自分の経験にしたいという思いもありますし、先輩に仕事を残すのは失礼だと考えることもあります。
マル子さんも先輩の口村さんに気を遣って、本来の自分の仕事ではないことをたくさん引き受けてしまいました。一子さんは年の離れた口村さんが指導担当だったのに口村さんは恐れ多く感じていて、話やすいマル子さんを頼ってしまいました。
あるいはまさに体育会的に、先輩より先にあるいは自分だけ先に帰ってはいけないと考えるスタッフもいるようです。
いっぽう、中堅看護師達は、新卒など経験が浅い相手に対しては任せきれないという思いもあって、後輩のお願いを引き受けたり監督したりもします。
マル子さんも、ついプリセプティーの言うことだからと、一子さんのお願いを引き受けてしまいました。
そのうえ、マル子さんみたいに「患者さんも看護師もみんな頑張ってるんだから、私も頑張ろう」と気合いで乗り切ろうとしてしまう、そんな看護師もいるのです。
なかなか破れない暗黙のルール
どこの病院・病棟にも業務手順などのマニュアル類はあるものです。
でも、看護師ならではの「やってあげると喜ばれる」という気遣いが、いつの間にか暗黙のルールになっていたり、あまり良くない習慣になっていたりすることがあります。
そして、その暗黙のルールは先のように上下関係が強い体育会系のノリがある消化器外科の職場では、破られにくいものかもしれません。
例えば、夕食前の血糖値測定は夜勤の仕事ですが、たまたま日勤者が“善意”で血糖値の測定をしたのが夜勤者に喜ばれて、いつの間にか慣習化して日勤業務になるというようなことです。
別の例としては、夜勤帯に入って病棟に来た医師をナースステーションで残業している日勤者が対応する、などもあります。
また、先ほどのマル子さんのように、微妙な交代時間帯や交代直後の手術のお迎えは日勤が行く、というのもそうかもしれません。
多くの看護師は「人に喜ばれたい」「感謝されたい」という思いや欲求を持って仕事をしています。夜勤の看護師の身からすると、忙しい交代時間の業務が減り、検温の途中でナースステーションに呼び戻されないのは、とても助かることでもあります。
夜勤の先輩に「ありがとう」「助かったよ」と言われると、体育会系の消化器外科の後輩は「役に立てた!」と自分もうれしくなってしまいます。
そうして必要以上に「やってあげよう」「やってあげたほうがいい」が、いつの間にか「自分もやらないといけない」「やらないと悪く思われる」になってしまうのです。
こういう時に「そんなに血糖測定が大変なら業務手順を見直そうよ」と客観的に考えられれば良いのですが、“善意”のつもりであり暗黙のルールになるとなかなか難しいようです。
気合で頑張ってしまいがちな消化器外科看護師なら、なおさらかもしれません。こうして、マニュアルには載っていない業務がだんだん増えていってしまう、ということが長時間労働の素になっていることもあります。
気づけばいつも人手が足りない?
「ナースのかえる・プロジェクト」のところでもお話ししましたが、消化器外科病棟でも様々な理由で欠員が出ることはあります。
欠員が出るときに、消化器外科では独特の雰囲気があるために「業務についていけない」「雰囲気が合わない」という理由が挙がりやすいかもしれません。
また、欠員が出るのはどこの部署でもあることですが、消化器外科では欠員が出るとそのダメージが大きいかもしれません。例えば「結婚・妊娠・出産」といった理由での欠員は、たいていは働き盛りの中堅と呼ばれる年代の看護師が多いのです。
こういう中堅の看護師達は、しばしば消化器外科の看護に熟達していて、一番仕事を的確に手早くこなすことができる人達です。こんな素晴らしい働き手が急に失われると、もともと業務も複雑なので一人減っただけでも大ダメージなのです。
中途採用がなかなか進まない実情もあって、欠員のままずっとやってきている病棟も少なくありません。
また、新しく来てくれた人も消化器外科のエキスパートで助かった!と上手くいけばいいのですが、そうはうまくはいかないことのほうが多いのです。
消化器外科看護の特性がわかる看護師に育てるには時間もかかるので、数では足りていても、実際にはさせられない仕事があるので欠員と一緒・・・ということもあります。
医師も長時間労働の素?
消化器外科に限らず外科系に多いことかもしれませんが、日勤と夜勤の交代の時間は、手術のお迎えが立て続けに入ることが多いです。というのも、日勤業務時間を区切りとして手術の麻酔科医の引継ぎが行われる病院もあるからです。
また、執刀医が麻酔科医の残業に気兼ねする場合もありますし、なんとなく日勤時間を節目に考えて手術を終える執刀医もいたりします。
そうすると不思議と夜勤への交代の時間帯に手術のお迎えのラッシュが来たりします。そうなると先ほどの夜勤者への気兼ねや気遣いもあり、日勤者はお迎えに行かずにはいられなくなってしまい、ついつい残業してしまうのです。
また、消化器外科の医師はどうしても日中の一番良い時間は手術のために長時間拘束されやすいのです。このため医師は手術の前後に病棟に来て処置をし指示を出すことも多く、夜勤でも患者さんの手がかかる朝食や夕食後などの時間に医師への対応に手を取られがちです。
あるいは、医師からの病状説明など看護師の同席を必要とするような面談も、手術や外来の後か患者家族さんも仕事の終わった夜勤帯にされることもあります。
こんなときは30分も1時間も夜勤が同席するわけにはいかないので、日勤者が残って対応することもあります。
研修や会議は時間内にできないの?
マル子さんも業務時間外に会議に参加していましたよね。他職種が参加するような大きな会議は、業務時間外に行っている病院も多いと思われます。
病院や労働組合の規定では、こういった業務時間外の会議は超過勤務として申告すると決められている場合が多いのですが、ここにも慣習が働いて申告されないこともあります。
消化器外科の看護師さんは勉強熱心な人も少なくないので、よく病棟で勉強会を開いていたりしますが、多くは自主参加として勤務扱いされていません。
時間内の会議や勉強会・研修であっても、それを挟むことで超過勤務になってしまった場合には、申告しづらい雰囲気があって結果サービス残業になってしまうこともあります。
委員会の仕事は持ち帰るのが当然?
病棟の委員会や係・チームなどの仕事はもちろん業務時間内にされてしかるべきです。
実際に、業務時間内には「患者さんにできることをしてあげたい」「患者さんのケアがされるべき」という考えがあり、委員会などの仕事は業務時間にしない看護師もいるようです。
消化器外科では時間内の業務量が多いので、業務時間内にはとてもじゃないけど委員会の仕事なんてできない、という看護師もいます。
また、業務時間中に「座って委員会の書類を作っているとさぼっていると思われる」などといった気兼ねもみられます。
消化器外科では四六時中ナースコールが鳴って、みんな忙しく動き回っていて、病棟の雰囲気もあって、委員会の仕事を業務時間内に済ませるのはとても難しいかもしれません。
業務時間内にできなかった委員会の仕事は、日勤業務が全て終わってから残って静かにやったり、持ち帰ったり、ということになってしまうのです。
消化器外科看護師はどうやったら、残業が多いのが当たり前ではなくなるでしょうか?
複雑な仕事をシンプルに?
長時間労働の改善や残業を減らすには業務改善が一番重要だと言われていますが、最も大変で時間のかかる取り組みだとも言えます。
消化器外科のような複雑な仕事をできるだけシンプルにするには、クリニカルパスの整備やマニュアルの整備をして業務内容を見直すことが大切です。
業務を見直していくと、必ずしも看護師がやるべきでないことにも手を出していたり、他職種と業務内容が被っていることもあります。
また、患者さんの自立する意識を育むことが不要な処置を減らすことにも繋がります。
業務時間内では、本当にその時間にその業務が必要なのかを見直しながら動くことも重要です。自分がこの時間帯にすべきこと、患者さんに必要なこと、は本当に何なのかを考えながら業務を見返してみると、業務を減らせるところが見つかるかもしれません。
医療事故には不安がありますが、確認作業はできるだけシンプルにして、しかし確実に行うように意識づけることが大切です。
このような業務の見直しは、暗黙のルールとしてやっていることや古い慣習を見つけて見直すことにも繋がります。スタッフ同士の協力体制も大切ですが、そのいっぽうで“善意”の行き過ぎには気を付けなければいけません。
しかし、業務改善にはとても時間がかかりますし、失敗したり、業務改善に関しての仕事が増えてしまう、という時期もあり得ます。
また、自分には業務改善までとても力が及ばない、どうしても今の病院の消化器外科での業務が合わないという方もいるでしょう。そんなあなたは、他の病院の消化器外科や他部署への転職を考えなければならないかもしれません。
体育会系のノリはどうしよう?
体育会系の雰囲気が長時間勤務に繋がるかも、という可能性もお話ししましたが、必ずしもこの雰囲気は良くないことばかりを招いているのではありません。
消化器外科の病棟には大抵は、何人かはなぜかとっても仕事が終わるのが早いスタッフがいるものです。そんな仕事の早いスタッフは、良い意味で力の抜き方を知っていたり、業務の時間配分が上手だったりします。
そういうスタッフに教えを乞うのはとても助けになることですし、そういう人達は「残業が当たり前」とは考えてはいないものです。
体育会系のノリを逆に活かして「みんなで早く帰ろう」「定時で帰ろう」という雰囲気づくりに活かすことも効果的かもしれません。
もしかしたら消化器外科の病棟では、先輩に口を出したり、後輩を一人にするのは辛いかもしれません。
でも、自分の意見を正直に言えた時、消化器外科の先輩達は後輩が自分達と対等な状態まで育ってくれたことを喜んでくれたりもします。後輩も、いつまでも誰かについてきてもらうわけにはいかないので、いつかは一人立ちも必要なのです。
マル子さんも正直に口村さんや一子さんに自分の思いを伝えることができたら良かったのかもしれませんね。
とはいえ、マル子さんのように、このような雰囲気を変えるのは一人の力ではなかなか難しいかもしれません。そういう時には転職という選択肢も必要になってくるでしょう。
暗黙のルールを打破する
暗黙のルールを破るには、ここまでにお話しした業務の見直しや職場の雰囲気づくりの力も必要かもしれません。というのは「暗黙」のルールですから、もともと病棟に備わっているマニュアルには載っていないことやマニュアルと違うことをしているはずなのです。
ですから、本来のマニュアルと違うところを見つけて、みんなで考え直しましょう、と提案することができます。
また、体育会系の雰囲気を活かして「患者さんにその時に必要なことをする」という風土づくりをすると、余計な業務の抱え込みを減らすことができるでしょう。
体育会系の病棟にも大抵数人はいる仕事の早いスタッフは、自分の不要な“善意”をどこで切ればいいか知っています。そういうスタッフの行動をちょっと観察してみたり、コツを聞いてみるのも良いかもしれません。
あるとき、多くの日勤者が夜勤に気を遣って日勤の記録を差し置いても夜勤の点滴作成をしていたので、その病棟で働き始めの人達はみんなそうするものだと思っていました。
しかし、よく観察してみるとそれをあまりやらない人が2人いたので聞いてみると、「それは日勤の仕事じゃないから手を出してはだめなんです」と同じ答えが帰ってきました。
また、「自分が日勤の仕事を完全に終わっているときは、自分も責任を持てるのでやる。中途半端に手を出すと間違いのもとになるから絶対にそれはしない」とも言っていました。
彼女達が点滴作成を手伝わないのは別に“善意”に欠けるからではなく、自分が責任をとれるかどうかという意識に基づいてのことでした。
2人はとても仕事が終わるのが早いことでも知れていましたが、患者さんに対しても同様に毅然としたスタンスをとっていました。
「こっちが“かわいそう”で手を出してもリハビリや指導は進まない。患者さん自身でできるようにしなければ、退院して困るのは患者さんです」と言っていました。
もちろん、患者さんを突き放すだけでなく、しっかりと信頼関係を築いてアセスメントもしたうえでそのようにしていました。
看護師は自分では“善意”と思っていても、本当の意味では患者さんや他のスタッフのためにならないことをして、仕事を増やしてしまうこともあるのかもしれません。
しかし、暗黙のルールは多くの病院であるものですし、職場の雰囲気にも色々ありますから、なかなか打破するのは難しいこともあります。
また、そこまで自分が強い立場で職場に物を言える状況にはないかもしれません。その時には、他の病院はどうかなと考えてみて転職をするのもいいのかもしれません。
欠員をどう補うか
欠員にはどの病院も少なからず悩んでいると思いますが、さまざまな欠員への対策がとられています。
短時間正社員を活用して「定員+α人」によるプラス配置モデル病棟を設置して欠員による業務負担の軽減にとりくんでいる病院もあります。
あるいは、プライマリー制のところに部分的に機能別看護を導入したり、看護助手や介護職を雇用したりすることで、看護師の介護業務への負担を減らす取り組みもあります。
また、夜勤人数を最低3人は確保すると、夜勤での残業時間はかなり減らすことができます。
経験が少ない人でも質の高い看護ができたり、消化器外科の特性にできるだけ早く馴染めるように、教育体制やクリニカルパスを整備することに取り組んでいる病院もあります。
しかし、このような欠員対策は病院全体や病棟レベルでの取り組みが必要で、看護師一人ではどうにもできない場合も多いのです。欠員が長く続いて長時間勤務を余儀なくされるような病院からは転職を考えるべきなのかもしれません。
医師にもちゃんと伝えよう
医師は必ずしも看護師の業務時間まで考えてくれるわけではありません。患者さんがまず一番ですし、消化器外科の医師は手術での拘束時間も長いので、それは仕方のない部分もあります。
でも、業務時間外の看護師に声をかけて指示を伝えたり処置をしたりするのは考えもので、万が一の責任がどこにあるかという問題も含めとても危険なことでもあるからです。
こんな場合、誰が夜勤で誰が日勤か、必要なことは今は誰に連絡するべきなのかといったことを医師にもしっかり伝え、誰が医師に対応するのかを明確にしておくべきです。
自分が日勤で残っているときに医師から声をかけられたら、マル子さんのようにただ愛想笑いをしていても同じことの繰り返しです。
「私は日勤なので責任がとれませんからお受けできません、夜勤の夜子さんにお願いします」と言えたら、マル子さんはさらに不要な仕事を引き受けずに済みました。
しかし、医師にこういうことを伝えても聞いてもらえないこともよくあることで、他職種との調整は病棟単位でもしくは病院単位で業務調整が必要なのです。
「何度もこうしてほしいと看護師長さんに言ってるけど、看護師長さんもどうにもできないみたい」なんて思っているそこのあなた、転職という選択肢、ありです。
会議や研修は業務の一つです
多くの病院では病院の規定や労働組合との取り決めによって、会議や研修は時間外業務として計上することが許されています。
実際には超過勤務として申告しないことが暗黙のルールになっている、気兼ねして申告できない、申告しても構わないことが知らされていない、などの場合があります。
病院の規定などでそのように取り決められていない場合には、規定されるようにしてもらったり労働組合を使って話し合ってもらうことができるでしょう。
また、申告しないことが暗黙のルールや気遣いになっている場合は、逆に申告することをルールにしなければなりません。特に病院で規定されているような会議や研修の場合は、申告しなければ病院も規定に反することになります。
また、病棟で行われるような小委員会や勉強会などはなるべく時間内に行えるように、病棟内で調整をするようにしましょう。こうすることで、会議や研修による未払い残業は減らすことができるはずです。
しかし、病院に規定がない場合や、自分ひとりの力では暗黙のルールを破ることができない場合には、適切に支払ってもらえる病院を探して転職するのが一番の近道です。
持ち帰りの仕事をなくそう
持ち帰り仕事の影響は、事実上のサービス残業、ということだけではありません。家に帰ったり職場を離れても仕事から離れることができず、プライベートとの区別がつかなくなったり、精神的にいつもストレスや疲労を抱えた状態になりがちです。
日常の業務が多い消化器外科では、業務時間内には委員会などの仕事をするための時間を確保することがとても難しいかもしれません。また、時間を確保できても、周りへの気兼ねなどから、堂々とはできないかもしれません。
でも、そこは勇気を出して少しずつでもやっていき、持ち帰りの仕事を減らしましょう。委員会の仕事は病棟のためにやっていることなのですから、直接の看護業務ではないけれども立派な仕事なのです。
そして、仕事と自分の生活を分けて考える時間を持ちましょう。
人のためになるとか、人を喜ばせるとか、人を癒すために、看護師の仕事を始めたかもしれません。でも、仕事が全てではありませんから、あなた自身も癒されて楽しめる時間が必要です。
あなたがしっかり休めてこそ、患者さんにも看護をすることができます。
でも、どうしても持ち帰りの仕事を減らせない、そんなときには、あなたの時間をゆっくりとれるような場所へ転職を考えてみてはいかがですか。
まとめ
いかがでしたか?ここまで消化器外科病棟の残業やサービス残業について考えてみました。消化器外科ならではの要因もありますし、全国的に多くの病院でも困っているような要因もありました。
消化器外科病棟には業務内容も雰囲気も特徴的なところがあって、残業が当たり前になることもあり得るという現状を感じていただけたでしょうか?
もちろん同意できる方もいれば、私はこういう雰囲気が好きなんだという方もおられると思います。
自分の職場がこんなふうに、業務や記録が煩雑で、体育会系のノリで抜け出せなくて、何でこんなことやるのか疑問に思う、そんな職場なんてことはありませんか?
残業を減らそうと頑張っていてもなかなか思うようにいかないなんてことはありませんか?業務は整理できず、職場の雰囲気が変わらず、医師から協力も得られず、欠員で、毎日のお土産は仕事、なんてことはありませんか?
どうしても自分の力だけで環境を変えることができないときには、最終的には転職が一番の解決策なのかもしれないということも感じてもらえたのではないでしょうか。
でも、いざ転職するとなると次の職場選びは慎重にしたいですよね?
実際の残業時間や、業務の様子や、職場の雰囲気や、欠員補充の状況や、他職種との連携や、会議や研修の扱いはどうか、なんて、自分で全部調べるのはとっても大変です。
自分で調べてみても、ホームページにはいいことしか書いてないよって疑ってしまいます。
そんなときは大丈夫、転職サイトに登録して担当者に相談してみてください。転職サイトは病院の情報の宝庫ですし、コンサルタント達は病院の諸事情に精通しています。
あなたが職場に求めていること、それらを全て見極めて、きっとあなたにぴったりの新しい職場を見つけてくれますよ。
執筆者情報
消化器外科 看護師の求人 編集部
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